溶接棒における炭化ホウ素(B₄C)の役割
耐摩耗性の向上
炭化ホウ素は、最も硬いセラミック材料として知られています。その高い硬度と耐摩耗性により、耐摩耗性クラッディング溶接棒の重要なコンポーネントとなっています。クラッディングプロセス中に、炭化ホウ素粒子が溶接金属マトリックスに硬質相として埋め込まれ、複合材料構造を形成します。これにより、表面の耐摩耗性が大幅に向上し、鉱山機械や破砕ローラーなどの摩耗しやすい部品の修理に適しています。
高温安定性とアーク保護
炭化ホウ素の融点は2450℃と高く、高温溶接でも安定しています。コーティングに炭化ホウ素を添加すると、コーティングの耐高温性が向上し、コーティングの早期分解が軽減され、アーク安定性と保護ガス(CO₂など)の連続放出が確保され、空気が効果的に遮断され、溶融池の酸化が防止されます。
合金化と結晶粒の微細化
高温アークの作用により、炭化ホウ素は部分的に分解し、ホウ素(B)と炭素(C)を放出することがあります。ホウ素は溶融池に浸透して結晶粒を微細化する役割を果たし、溶接部の強度と靭性を向上させます。同時に、炭素を添加することで溶接金属の炭素含有量を調整し、硬度と耐摩耗性を最適化できますが、脆さの増加を避けるために量を制御する必要があります。
補助的な脱酸素および精製効果
ホウ素は酸素との親和性が強く、溶融池内の酸素と結合してホウ素酸化物(B₂O₃など)を形成し、酸化物介在物を減らし、溶接部の純度を向上させることができます。この脱酸素効果は従来の脱酸素剤(シリコンやマンガンなど)ほど大きくはありませんが、補助的な精製メカニズムとして使用できます。
特殊な応用シナリオ
原子力産業や中性子遮蔽分野では、炭化ホウ素は中性子吸収能力に優れているため、溶接部の中性子遮蔽性能を高めるために特殊な溶接棒に使用されることがありますが、この用途は比較的ニッチです。